図書館類・総合研究所ブログ

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「オンライン蔵書検索開始記念講演会」 -知の拠点から知の発信へ- (速報)

「オンライン蔵書検索開始記念講演会」

 -知の拠点から知の発信へ-

 

開催日:2013年11月1日

場 所:横浜市大倉山記念館ホール

講 師:平井誠二(大倉精神文化研究所研究部長)

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「初めて明かされる大倉精神文化研究所附属図書館の全容-貴重コレクションを中心に」

講演は3本ありましたが、大倉精神文化研究所附属図書館についての講演は、最初だけだったので、他は割愛します。

 

平井氏

 

この図書館は、書庫が基本になっている。ただし、公開スペースにも12000冊の本がある。書架は、震災時でも大丈夫なように設計されている。先だっての東日本大震災の時も、ほとんど影響がなかった。おそらく、他のどの図書館より安全なのだろうと思う。公開書庫は書庫全体のごく一部、普段はシャッターがしまっていて、入れないようになっている。書庫は5層になっている。ごくたまに、書庫見学などを企画したりしているので、その際に見学することは可能だが、基本的には入れない。書庫の2階、ここは、歴史関連の本。大日本史料とか大日本古文書とかがある。4層目は、雑誌が収蔵されている。860タイトル、5万冊くらい。5層目は、貴重書コレクションがある。

我々の図書館は、いわゆる専門図書館なので、公共図書館のように幅広い収集をしているわけではない。心について学ぶ図書館、人間の心について。これは、大倉精神文化研究所の精神とも合致している。強い心を持てるようにする。専門図書館なので、特殊な傾向にあるのが特徴である。哲学、文学、宗教学が中心で、その他の、分野はほとんどない。およそ10万冊のコレクションになっている。実は、この詳細な内訳は今まで我々も把握はしていなかった。最近になって、内訳がやっとわかってきた。自分たちのものなんだから、しかも図書館なのだから何でもわかっているのだろうと言われることもあるが、アナログのデータでは全容の把握は、なかなか無理な状態。オンライン検索を開始するにあたり、書誌がデータ化されて、わかってきたことは、公共にもあるだろう、比較的入手しやすい図書が、約6割、6万冊くらいある。なかなか手に入らない特殊なものが4万冊くらいある。先ほど、10万冊のコレクションと言ったが、実は、図書館蔵書でないものもあるので、これ以上にある。貴重コレクション、雑誌などなど。ヨーロッパで購入した本もある。図書原簿には全部は記載されていない。この他にも、研究所の沿革史資料もある。これは将来的にはオンライン化も検討している。図書館の月報も含まれる。他に、手紙2万通、はがき3万通の所蔵。未登録の資料もある。まだどこにも記載されていないものもある。例えば事務用に購入した本などはこれにあたる。各研究室で購入した本も登録はされていない。あとは、関係者が個人的な私物など。戦中戦後の混乱時期に、出版されたもの、外地で購入した本なども入っている。これは、これからとても興味深い資料になっていきそう。

本研究所の創設者・大倉邦彦の購入した雑誌。本人がなくなった後、図書館に寄贈された。和書や雑誌などが中心。これらもあわせると、実際には20万冊くらいの蔵書規模になるだろうと思われる。

23種類の貴重書で構成されている。今は分類があるが、当時はまだ分類を採用していなかったので、独自分類となっている。番号で言うと「いーあ」が貴重書になる。337冊ある。伊勢貞丈の貴重書など。また、ヨーロッパで買ってきたものもある例えば、「アリストテレス全集」2冊セットだがそのうちの1冊。2冊目のもある。洋書コレクションの中に入っている。2冊まとめてセットで買えなかった。他に、古文書古記録影写副本が280点759冊ある。これは研究所で作成したもの。どうやら研究所ができた時に作ったらしいので貴重でもないだろうと思うのだが、意外とそうでもなかった。借用したものは、大事だけど複製できないものを副本にした。実は、元の原本がすでになくなってしまっている、つまり、今の時点では、この複製本しか残っていない。そういう貴重なものがある。他に、タゴール文庫、大倉邦彦旧蔵文庫(これは、3000冊くらいある。)。大倉氏の本には、蔵書印が押されているが、一般の本でも押してあるので、大倉氏の蔵書印を押したものが何冊あるかはわかっていない。これは大倉氏が生前から図書館に本を寄贈していたことでもある。他には、道歌コレクションがある。これは、絵がそのまま字になっている。当時の一般庶民に、道徳や教訓を分かりやすい形で、教えようとしたものである。

 

【感想】

コレクションの紹介だったのだが、資料的にも価値のあるものの紹介だったので、できれば、もう少し丁寧なお話が聞きたかった。ただ、今回のオンライン検索の作業によって、大倉精神文化研究所附属図書館のコレクションの全容が見えてきたことは、今後の日本史研究にとっても重要なことだ。まだ未解明な資料も多く所蔵しているようなので、ぜひ、そのあたりについても、解明をしてもらいたい。と、感じた講演でした。