図書館類・総合研究所ブログ

ブログ「図書館類・総合研究所」の中の人。公共図書館を中核にしながらも、大学・学校・専門図書館。それを支えるICT教育。書店・出版社の動向。情報システムの動き。MLA連携。自治体の情報化をフィールドワークにしています。Facebook https://www.facebook.com/yuta.hattori.311  Twitter https://twitter.com/hat2hat2

3Dプリンターの図書館利用を考える(試論)

Dプリンターを、慶應義塾大学湘南キャンバスの図書館が、今年4月に導入したことは、まだ記憶に新しいと思う。

 

 大学図書館に「誰でも使える」3Dプリンタを導入したSFC その狙いは

 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1306/14/news059.html

 

当初、3Dプリンターのおもしろさには引かれながらも、図書館が3Dプリンター?という考えが強かったのも事実である。

ただ、この技術は、図書館分野で使えば、今までにない利用層の獲得や、教育手法になるのではないかと考えていたところに、ヤフーが917日に「さわれる検索」プロジェクトを発表した。これは主に視覚障がい者の子どもを対象に検討されたプロジェクトと思われる。

 

 検索結果を3Dプリンタで「生み出せる」 ヤフー、新コンセプト「さわれる検索」

 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1309/17/news137.html

 

その活動報告が、111日に発表された。約2ヶ月間に90を超える、3Dモデルが出力されたという。

 

 小学生は3Dプリンタで何を作るか――ヤフー「さわれる検索」の結果を報告

 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1311/01/news133.html

 

図書館とは直接関わりのない記事だが、3Dプリンターを使って、障がい者支援を行う発想はおもしろい。点字図書館や公共図書館の障がい者サービスなどの分野に、応用が利くのではないだろうか。

視覚障がい者の、造形意欲が喚起されることは、まちがいないだろう。「3D」という形でさわれる仕組みに変換できることは、非常に重要なことである。

 

ヤフーのプロジェクトも、同様だと考えられるが、3Dプリンターが大学図書館や、ヤフーなどで導入されてきた背景には、「低価格化」「コンパクト化」「出力時間の高速化」が大きかったように思う。

私も、先日、3Dプリンターのセミナーに行ってきて確信したのだが、この3点はセットでなくては意味がないということだ。

 

 「3Dプリンターものづくりセミナー」に参加して(感想)

 http://fzsl00.hatenablog.com/entry/2013/11/02/175639

 

「低価格」ということは、大量購入が可能ということを意味する。それまでの3Dプリンターの市場価格が数百万から数千万ということを考えれば、10万前後のこの価格は非常に重要になってくる。

「コンパクト化」ということは、持ち運べるということになる。これも、従来の製品は設置型なので、移動させることは不可能である。コンパクト化された製品の特徴は、比較的軽量なものから、事実上持ち運びを意識したものまで様々である。

「出力時間の高速化」についてだが、これは非常に重要なことで、いくら低価格になって、持ち運びが出来るようになっても、出力時間がかかるようでは運用面で現実的ではない。設置型のプリンターは、出力時間も、10時間程度かかるので、運用としては厳しいものがある。それが、約1時間くらいまで、短縮されているので、運用面での支障はなくなっているだろう。

 

こうした背景があって、慶應義塾大学図書館やヤフーでの、運用が可能になったと思われる。大学図書館にかかわらず、公共図書館や、学校図書館で、手軽に3Dプロセスを体験してもらうことや、ものの形にへの理解度教育などに効果があるように思う。公共などでは、もの作りをしている人たちへの、ビジネス支援にもなると思われる。

 

低価格プリンターはいろいろ出てきているので、参考に下記の記事を紹介しておく。

 

 2chにスレ立ち「びっくり」 10万円台の国産3Dプリンタ組み立てキット「Cell P」が  できるまで

 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1308/28/news057.html

 

 Robotma.com、自分で作る3Dプリンタ組み立てキット「CellP 3Dプリンター組立キット」を発売

 http://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1306/12/news056.html

 

 「反響はかなりあります」――オリオスペックで6万円台3Dプリンタのデモ公開

 http://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1307/27/news009.html

 

 40万円の3Dプリンタ「CubeX」シリーズを販売開始

 http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1304/18/news059.html

 「Cube」シリーズは、10万前後の製品もある。

 

 4万円以下のおしゃれな卓上3Dプリンタ「Buccaneer

 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1306/05/news084.html

 

 ※10万をきる製品については紹介はしているが、個人ユースのものだったり、耐久性への課題はあるかもしれない。このあたりについては、十分に検証していないので、各自検証することをお勧めする。

 

さて、最後になったが、高価格帯の製品についてだが、図書館電算システムの入換え時に、検討することも、考えてみてはどうだろうか。価格は、量産化されたとしてもドラスティックに下がることは考えにくいが、耐久性や、サポート体制、プリントの精度については間違いなく、低価格帯を圧倒している。

例えば、こんな導入はどうだろうか。中小企業がもの作りをする際に、当然、企画段階でプロトタイプを作るわけだが、ここにも相当な初期コストがかかる。企画がボツになれば、初期費用すら回収できない。そこで、3Dプリンターを図書館が購入して、企業支援をするというようなことも考えてもいいだろう。新しい形のビジネス支援のモデルになると思われる。