図書館類・総合研究所ブログ

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図書館総合展「”まち”と”ひと”を創り出す図書館へ」(速報)

【図書館総合展】

「”まち”と”ひと”を創り出す図書館へ」(速報)

※ただし、詳細版は出ないかもしれません。

 

講演日:2013年10月30日

講 師:和気尚美(コペンハーゲン大学情報アカデミー)

    吉田右子(筑波大学大学院教授)

    野末俊比古(青山学院大学教育人間科学部准教授)

    伊藤隆彦(鹿島建設株式会社)

場 所:パシフィコ横浜

 

 

当日は、100名収容の部屋なのに120名の参加があったそうだ。おかげで、とにかく暑かった。私は汗がダラダラでました。

 

伊藤氏の話は、鹿島建設と図書館の関係や、4つの図書館事例を紹介していたが、やや本論から離れているので、割愛する。

 

和気氏

デンマークの図書館の中でも特にコペンハーゲンの図書館事例を報告する。

約1年間、情報学アカデミーに滞在した。

コペンハーゲンはシェラン島にある。お隣のスウェーデンには電車で40分くらいで行ける。

ネイティブと移民との闘争がある地域に図書館がある。イラク人やモロッコ人などアラブ圏の移民が多い地域。デンマーク語とアラビア語のに言語併記の看板も多い。ユルナパーケン?に9割が移民のという団地がある。治安の悪い地域だったが、近年再開発を行って後援を作った。

 

アンデバスタバイ?図書館が再開発の中心。、COOBE?によって建てられた。複合型(図書館、文化の家、森林の家)の図書館。二つの図書館を閉館してこれを建てた。

壁面が本の紙のようなイラストになっていて、目を引く。「私の名前を忘れないで」というアーティストが制作した。中央吹き抜けの4階建てになっている。右側に図書館、左側に文化の家があって、その奥が森林の家になっている。

ここに限らず、デンマークの図書館は、図書館員がいる時間、図書館がいないセルフの時間がある。セルフの時間は、早朝と夜間であるが、高価な機材も多いので警備員をおいている。

 

コミセン機能を持つ図書館が16館あるがそのうちの一つである。この図書館で、運転免許書やパスポートの発行が可能となっている。中には、カフェグレルや、児童スペースがある。このスペースでは、親は子どもの様子を見ながら、雑誌を読んだりしている。カフェグレルの従業員の大半は、知的障害者である。雇用されているのではなく自分たちで運営している。

2階にあがるとYAの部屋がある。この図書館はコペンハーゲンの中で最も、児童書の貸出が多い。ヤングアダルトのフロアには、中央に学習用のテーブルがある。

文化の家は、年間5000円を支払うと、誰でも使用できる。移民も利用している。

図書館資料もあり、本を読みながらアイデアを出し合ったりしている。作業室は特殊な機材もある。各種団体が利用できる。

緊急課題としては、ITスキルの改善が課題。近々、政府系の文書がすべて電子メールになるため、コペンハーゲンの図書館はデジタルコペンハーナーとして住民の習熟に勤めている。例えば、高齢者のための高齢者IT支援だったり。

イーナノアブロ?の図書館は、平屋建てのシンプルな図書館。様々な他言語で、「ようこそ」と書かれている。移民の利用が多い。他言語資料が充実している。国際図書館としての機能もある。移民と移民でない人たちのディスカッションをしている。議題はいろいろ。ラマダーンの時間をどう過ごしているのか、どうして移民は固まって集住するのかなどである。

フロム・コネクション・ツウ・コネクションを積極的に行っている。それは、人と人とのつながりの中での情報共有を行うこと。

IT支援をおこなっているが、デジタルコペンハーナーとはまた異なり、ネットフットと呼ばれている。ITの質問ならどんな質問をしてもよい。利用するのは主に移民。相談員も移民。これは言い換えれば、先輩の移民が後輩の移民に対して情報を継承しているのだ。

「人を貸します」という方法。欧州では経済危機になり、ニートが増加してきている。こういった若年層にも何か出来ないかということで、キャリアビブリオピピン?が行われている。これは、興味のある仕事をクリックして、相談したい職種を選ぶ。そして、図書館が間に入って、人の調整を行う。例えば、職種で消防士を選ぶと、図書館員はまず、消防士と交渉して、日程の調整を行うのだ。私の知っている、移民の人も、以前はタクシーのアルバイトをしていたが今は、ITアシストの職につきたいとしてがんばっている。

 

 

吉田氏

北欧の図書館は、基本的に、飲食OK、おしゃべりOKのにぎやかな場所である。これが様々な意味で図書館を特徴付けている。朝の10時くらいにやっと明るくなり、午後3時にはうす暗くなる。今だとそんな季節にある国である。

この国は資料提供に関しては、1970年代にすでに確立している。その後は、コネクション・ツウ・コネクションとして、文化を体験しましょうということになっている。情報と文化のアクセスの保証、これが最も重要。この二つを柱になんでもやってしまう。

司書が図書館外に出て情報リテラシーをこれから学びたいと思っている人たちに対して、自らよっていって、サービスをするというメディアの出前というようなことを行っている

住民参加ということで言うと、デンマークの図書館には、「デモクラシーコーナー」といものがあり、週に1回、図書館に来て議員が本を読んでいて、市民が話に来たりするコーナーがある。日本の場合は、住民が議員のところへ足を運ぶのだが、ここが違う。人気のない議員の場合は人もこないということもありえる。図書館は、市民の政治参加の場所でもある。

地元の絵画サークルが図書館で展示している。特に移民の少女たちにとっては、図書館は重要な場所。学校の帰りに図書館によって、話をしたりしている。

社会的に孤立しがちな人たちを、図書館が支援している。

図書館とは、文化的な刺激を受ける場であり、創作活動をする場であり、学びの場でもある。それを文化的仲介者としての司書がつなぐとい図式になっている。

図書館はフルタイムの人は使えない。開館時間が減る一方、日曜祝日は休み、夜間は開館しない。これは、司書も家族で過ごす時間は重要との認識が社会にあるから。では、図書館の恩恵をうけていないこれらの人たちが、なぜ図書館を支持するのか。

それは、図書館は文化と情報へのアクセスするための重要な拠点ということを知っているからだと思う。コミュニティにとって重要なことは、すべての人たちが情報を共有できること。図書館を長いスパンでみているのだ。今は行けないが、いつか図書館を利用する可能性があると、捉えている。

 

 

ディスカッション

Q:移民の子供達の支援は

A:宿題カフェが、デンマーク全土で行われている。それはノアブロで始まったもの。難民協会と協力してやっている。週に1回行う。あらゆる悩みを受け付ける。ノアブロでは大人も対象になっている。

Q:北欧の図書館員の業務が多岐に渡っているが資格はどうなっているのか

A:学部卒であれば、司書資格は取れる。デンマークの図書館の多彩なメニューは、すべて連携が基本。司書はアレンジャーとして活動している。司書がカウンセリングしているのではなくカウンセラーを呼んでくるのだ。

Q:北欧でまちはかわったのか

A:コミュニティの住民の権利を守ることが基本にある。カフェは美味しいし、オーガニック。基本的に、図書館は空気のような存在なので、みんな気にしない。図書館員はその状況には不満持っているようだが。

Q:空気のような存在になる図書館は、なぜできたのか。

A:それは、私(吉田)にとっても、これからの研究課題だと思う。ただ、日本では文化は人の生死に関わりがないと言われるが、デンマークでは、文化は人間にとって生死に関係すること、としてとらえているのではないだろうか、文化を剥奪されるとダメージを受けるものだと思う。特に、司書はそう思っている。