図書館類・総合研究所ブログ

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ドイツの漫画ってどんなもの?

ドイツコミックが紹介される機会は少ないので、これはいい機会です。私も10月に入ったらぜひ訪れて見たいと思っています。

 

9月12日07時00分 提供:Excite Bit コネタ

 

漫画は言うまでもなく日本で大人気の文化であり、世界からも注目されている存在だが、ドイツでも近年独自のコンセプトで漫画が描かれている。

それを紹介しているのが11月16日まで都内で開催される「13人のドイツ・コミック作家展」(場所・武蔵野美術大学美術館内/同美術館・図書館、Goethe-Institut Tokyo主催)だ。アメリカ、ルーマニア、フィリピン、イギリス、タイ、日本と世界中を巡回しており、東京では今回が初めての開催となる。さて、ドイツの漫画ってどんな感じなのか、早速足を運んでみた。

まず、歴史を遡ると、ドイツ・コミックの源流と言える作家が19世紀に存在する。それは、ヴィルヘルム・ブッシュ(1832-1908)という人物で、諷刺画雑誌を中心に繊細な線で軽妙に漫画を描いており、代表作「マックスとモーリッツ」は世界中で翻訳され、日本では1887年にローマ字訳で出版されている。

20世紀に入り、フランスとアメリカのコミック文化の影響を強く受け、その形式を模倣するようになるが、1990年代以降「ドイツ・コミックが帰ってきた」(プラットハウス)というように、東ドイツ出身のコミック作家を中心とするオリジナリティに富んだ前衛的な作品がつぎつぎに発表される。そして現在、ベルリンとハンブルクの二つの都市で漫画家集団が形成され、アカデミックで前衛的作品だけでなく、日本の漫画の影響を受けた作家も多く輩出されている。

では、具体的にどんな作品なのか観ることにしよう。まず驚いたのが、アンケ・フォイヒテンベルガー氏の作品「wehwehwehsupertraene.de」。木炭で描かれたぼやけ気味の線で「夢遊病的な影と輪郭」が特徴。展示作品はあるコミックシリーズのためのイラスト集ということだが、漫画というより余りに前衛芸術的という印象だ。日本ではこのような絵柄の漫画を見た記憶がない。むしろ何かの西洋絵画展で見たようなイメージだ。また、「京都での旅日記」というタイトルの作品はカラーで、対象物がシュールに擬人化されているのがおもしろい。

次に注目されるのは、140億年の壮大な生命の進化をテーマにした作品「アルファ」を描いたイェンス・ハーダー氏。今回の展示では恐竜の発生、象の進化の漫画が見られる。子供の頃、恐竜、動物図鑑を眺めていたことを思い出す。セリフはまったくないが、進化の物語が自然と理解できる。ほかに、「定義しえない生物が住む幻想上の島をめぐるイラストレーション」もあり、未知の世界への憧れと、想像力を刺激される作品だ。

ここまで漫画の枠に収まりきれない凄い作品が続いたが、漫画らしい作品を描く作家ももちろんいる。フリックス氏がその一人。彼の作品「ファウスト悲劇第一部」は原作の物語を現代に置き換えてユニークなキャラでコミカルに描写している。

また、「コミック作家」という作品では作家の日常を描き、その中で「僕には心理学者の知り合いがいる。この男はかつてコミック制作には孤独が大いに関係しているというがそれは違う」と意味深なことを独白しており、文学的な魅力を感じる。

ところで、ドイツと言えば哲学の本場であるが、その哲学的な香りを漂わせる作品を描くのが、ウルフ・K氏。セリフのない漫画で書物や絵画が動き出して日常の世界が一変するといったシュールな漫画や、「フィロゾフィッシュ」という文字通り哲学魚が主人公の漫画を描き、眠りの中で観る別世界のことや、前世の存在のことを語る。日頃見ている世界の意味を問い直すような作品で、読んでいると哲学的気分にさせる。

アートで文学的作品ばかりの中で、日本の漫画の影響を強く受けたと思われる作品もある。クリスティーナ・プラカ氏のロックバンドとしての成功を目指す若者たちの葛藤のドラマを描いた「Yonen Buzz」がそれで、日本漫画の特徴をかなり反映した絵柄で、日本人の描いた漫画と言われてもおそらく違和感がないだろう。迫力ある演奏シーン描写はなかなかのものである。

今回、ドイツ人漫画家たちの凄まじい創作力に圧倒された。ほかにも紹介しきれない興味深い作家、作品がたくさんあるので、残りはぜひ同作家展に足を運んで見てもらいたい。